直せないモノは無い

近所の子どもが泣いている。仕事が休みの技術者端くれがたずねる。
「どうしたの?」
「ゲームが、壊れちゃったの。」
電源は入るがゲームができないと言う。
「どれ、お兄さんに見せて見なさい。」

普通、ゲーム機を分解できるものは少ない。でもそこは端くれとはいい技術者、ちょいちょいっとばらばらにする。不安に見つめる子ども。
原因は簡単だった。CDから基板へ向かうケーブルが外れている。サクッと繋ぎなおす。組み立てる。
「ほら、直ったよ!」
「わーい!」
子どもは喜び帰って行った。


本物の現場を体験した技術者は知っている。直せないモノなど決して無いこと。そして原因は案外簡単であること。でなければ何百年も前の機械が今も変わらず動くなんてことはありえないはずだ。
でも、人間はあきらめてしまう。直すことがあまりに難解であったり、もっと魅力的なモノが見つかるからだ。


神の作り出した人間、人間が作り出した機械。人間関係だって、人間の体だって直せないモノは無い。だから、簡単にあきらめないで欲しい。簡単に別れないで欲しい。簡単に破滅しないで欲しい。簡単に捨てないで欲しい。ここ数年間色々な体験をし、神業に対面し、己の限界を痛感し、人間関係で悲を味わったこの技術者の端くれの言葉である。


私は技術者だ。直せないモノは無い。まずは症状の分析からはじめようじゃないか。